歯と口の健康のために 「噛む回数」がもたらす効果とは
2024/12/20
「ミニマルインターベンション(MI)」の考え方には5つの項目が掲げられており、その中の一つに「患者様への教育」があります。その代表例でもある口腔衛生指導(OHI)は歯科医院において欠かせない役割を果たしており、単に歯を磨く方法を教えるだけでなく、患者様の全身の健康に直結する重要なプロセスです。今回は、食事中の噛む回数と歯や口の健康との関係についてご紹介します。
なぜ噛むことが大切なのか?
食事のとき、食べ物を何回噛んでいますか?忙しい日々の中で、噛む回数を意識して食事をする人は少ないかもしれません。しかし、「噛む」行為は単なる食事の一部ではなく、口腔内から始まる消化・吸収のプロセスにおいて重要な役割を果たしています。
・歯や顎の健康を保つ
噛むことで歯や顎に適度な刺激が加わり、顎の骨や歯周組織が強化されます。また、唾液の分泌が促進され、むし歯や歯周病を予防する効果も期待できます。
・消化を助ける
食べ物を細かく噛み砕くことで、消化酵素が働きやすくなり、栄養を効率よく吸収できます。これらの作用により、胃腸への負担が軽減されます。
・脳の活性化
噛む動作は脳への刺激となり、記憶力や集中力の向上に繋がります。特に成長期の子どもには重要な習慣です。
1口につき何回噛むのが理想?
一般的に、1口につき30回程度噛むことが理想とされています。噛む回数を増やすことで食べ物が細かくなり、唾液と十分に混ざることで消化がスムーズに進みます。ただし、食べ物にはさまざまな硬さのものが存在するため、軟らかいものでも30回噛むのは難しいと感じる方も多いでしょう。もちろん、食品の硬さによって噛む回数も変わってきます。食事の時間が20~30分程度かかるようにすると満腹感を得られるともいわれているため、時間を一つに目安にするのもよいでしょう。また、軟らかいものばかりを食べるのではなく、ある程度硬さがあって30回程度噛めるものを意識的に取り入れていきましょう。
まとめ
歯と口の健康を守るためには、「何回噛むか」を意識することが大切です。噛む回数を増やすことで全身の健康にも繋がります。1口30回を目標に、食事をゆっくり楽しみながら歯や顎の健康をサポートしましょう。
唾液腺マッサージで口腔環境を健康に
2024/12/16
「ミニマルインターベンション(MI)」の考え方には5つの項目が掲げられており、その中の一つに「患者様への教育」があります。その代表例でもある口腔衛生指導(OHI)は歯科医院において欠かせない役割を果たしており、単に歯を磨く方法を教えるだけでなく、患者様の全身の健康に直結する重要なプロセスです。今回は、唾液腺マッサージの方法やメリットについてご紹介します。
唾液腺マッサージとは?
唾液は私たちの口腔内を健康に保つために欠かせない役割を果たしています。唾液がしっかりと分泌されることで口の中が潤い、食べ物の消化を助けたり、むし歯や口臭を予防する効果がありますが、ストレスや加齢、生活習慣などの影響で唾液の分泌量が減少してしまうこともあります。そのようなときに役立つのが「唾液腺マッサージ」です。唾液腺マッサージは、口腔内に唾液を分泌する唾液腺を刺激することで、唾液の分泌を促進する方法です。
唾液腺の種類
唾液腺は大きく分けて3種類あります。これらの唾液腺をやさしく刺激することで、唾液の分泌を助けることができます。
・耳下腺(じかせん)
耳の少し前、頬骨の下に位置しており、さらさらとした唾液を分泌します。
・顎下腺(がっかせん)
顎の下にあり、やや粘り気のある唾液を分泌します。
・舌下腺(ぜっかせん)
舌の下にあり、少量の粘り気のある唾液を分泌します。
唾液腺マッサージの方法
唾液腺マッサージは簡単で、1回数分程度で行えます。3か所のマッサージを組み合わせて行うことで、唾液の分泌を効果的に促進できるでしょう。
・耳下腺
両手の指先を耳の前、頬骨の下あたりに置きます。ゆっくりと円を描くように10回ほどやさしく押しながら回します。
・顎下腺
顎の骨の内側に両手の指を当てます。内側から外側に向かって10回ほど押し流すようにマッサージします。
・舌下腺
親指を顎の下に、他の指を顎の上に置きます。親指で押し上げるように10回ほど軽く刺激します。
唾液腺マッサージのメリット
唾液腺マッサージには以下のようなメリットがあります。
・ドライマウスの改善
唾液の分泌が少ないと感じる方におすすめです。
・口臭の予防
唾液が細菌を洗い流し、口臭の発生を抑える効果があります。
・むし歯や歯周病の予防
唾液の抗菌作用でむし歯や歯周病のリスクを軽減できます。
まとめ
唾液腺マッサージは、唾液の分泌を促進し、口腔内の健康を維持するための簡単なセルフケア方法です。ドライマウスや口臭が気になる方は、ぜひ日常生活に取り入れてみてください。気になる症状が続く場合は、歯科医院で相談しましょう。
唾液の働きを守るためにできること
2024/12/11
「ミニマルインターベンション(MI)」の考え方には5つの項目が掲げられており、その中の一つに「患者様への教育」があります。その代表例でもある口腔衛生指導(OHI)は歯科医院において欠かせない役割を果たしており、単に歯を磨く方法を教えるだけでなく、患者様の全身の健康に直結する重要なプロセスです。今回は、唾液の働きを守るためにできることについてご紹介します。
さまざまな唾液の働き
唾液は口腔内の健康を保つだけでなく、消化を助けたり、感染症を予防したりと、私たちの体に多くの恩恵をもたらしています。しかし、生活習慣やストレス、加齢によって唾液の分泌量が減少すると口腔内環境が悪化し、むし歯や歯周病、口臭といったトラブルが起こりやすくなります。では、唾液の働きを守るためにはどのようなことに気をつけたらよいのでしょうか。
よく噛む習慣をつける
食事の際によく噛むことは、唾液分泌を促進する最も簡単で効果的な方法です。噛む回数が増えると唾液腺が刺激され、唾液が多く分泌されます。特に硬めの食品や野菜を取り入れると、自然と咀嚼回数が増えます。また、噛むことは消化の助けにもなり、胃腸の負担を軽減するメリットもあります。
水分補給を忘れない
唾液の主成分は水分です。そのため、体内の水分が不足すると唾液の分泌量が減少してしまいます。特にエアコンの効いた部屋や乾燥した環境では知らず知らずのうちに体が脱水状態に近づいていることがあるため、こまめに水分を摂取することが大切です。1日あたり約1.5~2リットルの水を目安に摂取するとよいでしょう。なお、糖分が多い飲料やアルコールは逆効果になることがあるため、純粋な水やお茶を選ぶのがおすすめです。
口腔ケアを徹底する
適切な口腔ケアは、唾液の働きをサポートします。歯磨きや舌磨きを習慣にすることで口腔内を清潔に保ち、唾液の抗菌作用や浄化作用を十分に発揮させることができます。特に舌苔は口臭の原因になるため、専用の舌ブラシを使って優しく取り除きましょう。また、ガムを噛むこともおすすめです。ガムを選ぶ際は、無糖のものやキシリトールが配合されているものを選んでみましょう。
まとめ
唾液が十分に分泌されている状態は、健康な口腔環境の維持に欠かせません。よく噛む習慣や水分補給、口腔ケアを意識的に行うことで、唾液の働きを守ることができます。日々の生活に少しの工夫を加え、口腔内のトラブルを防ぎましょう。
私たちの健康を支える唾液の働きとは
2024/12/09
「ミニマルインターベンション(MI)」の考え方には5つの項目が掲げられており、その中の一つに「患者様への教育」があります。その代表例でもある口腔衛生指導(OHI)は歯科医院において欠かせない役割を果たしており、単に歯を磨く方法を教えるだけでなく、患者様の全身の健康に直結する重要なプロセスです。今回は、唾液が持つ7つの重要な働きについてご紹介します。
唾液の働き
唾液は口腔内を潤すだけでなく、私たちの健康に欠かせない多くの役割を果たしています。唾液の働きを理解することで、日々の口腔ケアの重要性を再認識しましょう。
・口腔内の浄化作用
唾液には口腔内を洗い流す作用があります。食事やおやつの後に残る食べかすや細菌が生成する酸を中和し、歯や歯ぐきを清潔に保つ働きがあります。この作用がむし歯や歯周病の予防にもつながります。
・抗菌・抗ウイルス作用
唾液には、リゾチームやラクトフェリンといった抗菌成分が含まれています。これらの成分が細菌やウイルスの活動を抑え、感染症から体を守る重要な役割を果たしています。そして口腔内の健康だけでなく、全身の免疫機能にも関与しています。
・消化を助ける作用
唾液にはアミラーゼという消化酵素が含まれており、食事中のデンプンを分解し、消化を助ける役割があります。咀嚼時に唾液と食べ物が混ざることで、胃や腸の負担を軽減することができます。
・再石灰化作用
唾液は、歯のエナメル質を修復する「再石灰化」を促進します。食事や飲み物によって歯が酸にさらされるとエナメル質が一時的に溶ける脱灰が起こりますが、唾液中のカルシウムやリンがこれを補い、歯を健康な状態に保ちます。
・潤滑作用
唾液は口腔内の粘膜や歯を潤し、食事や会話をスムーズに行うための潤滑剤の役割を果たします。唾液が不足すると口腔内が乾燥して食事がしづらくなったり、話しにくくなる場合があります。
・味覚をサポートする作用
味を感じるには、唾液が欠かせません。食べ物の成分を溶かし、味蕾(みらい)と呼ばれる舌の味覚受容体に届けることで、甘みや酸味などの味を感じることができます。唾液が減少すると、味覚の感度も低下することがあります。
・緩衝作用(酸を中和する作用)
食後の酸性度が高まった口腔内環境を、中性に戻す働きがあります。唾液中の重炭酸イオンが酸を中和することで、むし歯の原因となる酸性状態を防ぎます。
まとめ
唾液の健康を守ることは、口腔内の健康だけでなく全身の健康にもつながります。毎日の生活で唾液の大切さを意識し、適切なケアを心がけましょう。
口腔機能低下症の7つの検査とは
2024/12/04
「ミニマルインターベンション(MI)」の考え方には5つの項目が掲げられており、その中の一つに「患者様への教育」があります。その代表例でもある口腔衛生指導(OHI)は歯科医院において欠かせない役割を果たしており、単に歯を磨く方法を教えるだけでなく、患者様の全身の健康に直結する重要なプロセスです。今回は、口腔機能低下症の7つの検査についてご紹介します。
口腔機能低下症を早期発見するには
口腔機能低下症は、加齢や生活習慣の影響で口腔の機能が低下する状態です。噛む力や飲み込む力、舌や唇の動きなどが衰えることで、食べ物がうまく飲み込めなくなったり、発音が難しくなったりと日常生活に支障が出ることがあります。口腔機能低下症を早期発見・改善のためには、以下の7つの検査を行います。
・咀嚼力の検査
咀嚼力とは、食べ物をしっかり噛み砕く力のことです。検査用のガムで咀嚼後の色変化を確認し、どれだけ噛む力があるかを評価します。咀嚼力が低下すると食事の楽しみが損なわれるだけでなく、消化にも影響が出るため重要な検査項目です。
・嚥下機能の検査
嚥下機能は、飲み込みの力や動きを確認する検査です。飲み物やゼリー状の食品を飲み込んだ際の動作や時間を測定し、スムーズに飲み込めているかを調べます。嚥下機能が低下すると誤嚥のリスクが高まり、肺炎などの病気に繋がることもあります。
・舌圧の検査
舌圧は、舌の筋力を測る検査です。専用の測定器を舌で押し当て、その圧力を計測します。舌の筋力が弱くなると食べ物をうまく飲み込めなくなり、発音にも支障が出ることもあります。
・唾液量の検査
唾液は口腔内の乾燥を防ぎ、食べ物の分解を助ける重要な役割を持っています。唾液量が減少すると口腔内が乾燥しやすくなり、口臭やむし歯、歯周病のリスクが高まります。
・口唇閉鎖力の検査
口唇閉鎖力は、唇をしっかり閉じる力のことです。測定器を使い、口を閉じた状態でどれだけの圧力をかけられるかを確認します。この力が弱くなると食べ物や飲み物がこぼれやすくなり、嚥下にも影響が出る可能性があります。
・口腔乾燥の検査
口腔乾燥は口の中の湿度を測定し、乾燥具合を確認する検査です。口腔内が乾燥すると粘膜が傷つきやすく、感染症のリスクも高まります。
・発音機能の検査
発音機能の検査では、特定の音を発声し、その際の舌や唇の動きを観察します。「パ・タ・カ」といった音を連続して発音してもらい、口や舌の運動能力を評価します。
まとめ
口腔機能低下症は早期に発見し、適切なケアを行うことで進行を防ぐことができます。口まわりの機能で気になることがある場合は、早めに検査を受けるようにしましょう。